DVDのリップ規制を著作権法に取り込むことの難しさ

ちょっと間が空いてしまいましたが、DVDリップ規制の件の続きです。

前に書いたとおり、DVDのコンテンツはCSSと呼ばれるアクセス制御機能で保護されています。CSSを回避してDVDをリップするツールの販売・譲渡等は不正競争防止法で既に禁止されていますが、それだけでは足りなくて、リップ行為自体を違法にしたがっている人たちが著作権法を改正しようとしています。

この問題を考える際には、著作権法という法律の仕組みを知る必要があります。たとえば、著作権法は著作物の複製をコントロールしているわけですが、複製してはダメよと書いてるわけではなくて、以下のような書き方をしています。

第21条 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。

これによってデフォ状態では著作者以外の人が複製をすると、差止請求をされたり、損害賠償請求をされたり、刑事罰の対象になったりするわけです。もちろん、著作者が複製権を許諾したり、譲ったりすることができます(ちなみに、著作権法では権利を放棄するという規定が直接的にはないのでクリエイティブ・コモンズのような考え方を取り入れるにはちょっとトリッキーなことになります)。

さて、複製に限らず、上映、上演、譲渡、貸与等々の直作物の「利用」行為については、全部同じように著作者に独占権を自動的に付与するという仕組みになっています(このような権利のひとつひとつを支分権と言います)。この権利は契約等によって生じるものではなく、法律により自動的に効力を持つ(物理的な物の)所有権のような独占排他権です(本当にこのような制度が適切なのかどうかの議論はありますが別論)。

ということで、DVDリップのようなアクセス制御を著作権法に取り込もうとすると、最もストレートなやり方としてアクセス権を支分権のひとつとして新設することになるのではないかとの議論がありました。これは、本来的に著作物の視聴行為(「使用」)をコントロールしないという著作権法の「基本設計」に反しますし、検閲にもつながり得る(たとえば、「尖閣ビデオを見るのはアクセス権侵害なので警察に逮捕されます」なんてことが原理的にあり得てしまいます)ので副作用が大きすぎると思われます。

で、今回のDVDリップ規制の改正案では、さすがに、アクセス権を支分権として著作権法に取り込むという大胆なことはしないで小改造でこの問題に対応しようとしています(「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会?平成21・22年度 報告書(案)」(PDF)のp42以降を参照)。

結構長いのでポイントだけ書くと、現状の私的使用目的複製の規定(30条)の例外を拡張することで対応する方向性であるようです。

30条1項 (略)「著作物」は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(略)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

1号 (略)(公衆が使用できる自動コピー機でコピーするケース)

2号 技術的保護手段の回避(略)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合

3号 (略)(いわゆる「違法ダウンロード」のケース)

上記の30条1項2号の「技術的保護手段」は現在では厳密な意味でのコピー制御(マクロビジョン等)に限定されているわけですが、それをCSS、場合によってはマジコンのアクセス制御にも拡張するという方向性です。こにれより、DVDのリップは個人使用目的であっても権利者の許可が必要(要するに、通常は違法)となるわけです。いわゆる「違法ダウンロード」と同じ規定ぶりですので、「違法ダウンロード」同様に刑事罰は適用されないことになると思われます。まあ、落としどころとしてはこんなところでしょうがないかなという気はします。

とは言え、自分としては、レンタルDVDをリップするのと買ったDVDのリップするのは分けてほしいんですよね(法的にどういう規定ぶりにするかは難しそうですが)。前者については、レンタルCDとは異なり、権利者が想定していない複製なので規制されてもしょうがないとは言えますが、後者については、DVDをリップしてホームサーバにおいて家庭内の複数のテレビのどこからでも視聴できるようにするのはテクノロジーを活用して消費者の利便性を向上していることになる一方で、権利者の権利を不当に害しているとは思えないからです(リップできないなら茶の間と寝室用にDVDを1枚ずつ買おうという人は普通いない)。

ついでに書いておくと、以前、著作権法は著作物を「使用」(見たり、聴いたり、使ったり)行為をコントロールすることはないと書いた時に、「ほんのちょっとだけ例外あり」と書きましたが、その例外とは、以下のプログラムの使用に関するみなし侵害規定です。

113条2項 プログラムの著作物の著作権を侵害する行為によつて作成された複製物(略)を業務上電子計算機において使用する行為は、これらの複製物を使用する権原を取得した時に情を知つていた場合に限り、当該著作権を侵害する行為とみなす。

要は、会社等で違法コピーを行なっていたことを知った上でソフトを使うと、コピーした人だけではなく、使っている人も違法ということです(こちらは刑事罰も適用されます)。

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