iTunes on Cloudは日本で展開可能なのか(著作権法的な意味で)

(追記:2011/02/22 12:30)本エントリーは2011年1月24日付のものです。最新情報についてはこちらのエントリーをご参照下さい。

「まねきTV」および「ロクラク」の両方において知財高裁の判断を否定する最高裁判決が出たことで、コンテンツを事業者のサイトのサーバに置いておくと、外部から見た限りはプライベートなサービスのように見えても、行為の主体が事業者であるとされ結果的に違法となってしまうケースが増えそうです。

両判決については、ブログ「企業法務戦士の雑感」において詳しく分析がされています(「まねきTV」の方「ロクラク」の方)。ブログ主さんは、両サービスが違法であるとの認定をされたことについては別としてその結論に至るまでの論理構成について大丈夫なのかという懸念を持たれているようですが、私もその点は同意見です。

前回も述べたように、今までは個人が所有していた機器で行っていたことをクラウド上で事業者が所有・管理するサーバ上で行なうようになるケースがますます増えてきます。上記判決が、このような将来の方向性と合致しているのか気になるところです。

ひとつ例を考えてみると、Appleが計画中とされているiTunesのクラウド版があります(たとえば、San Jose Mercury Newsのコラムニストによる2011年の予測記事を参照)。今まで自宅のパソコン上に置いてあったiTunesのライブラリをAppleが提供するデータセンターで管理してもらうという形態です。こうしておけば、どこにいても自分のiTunsライブラリにあるコンテンツをスマートフォンにストリームしたり、ダウンロードできるので大変便利ですね。と言うよりも、これはある意味当たり前のサービスであって、既にAmazon S3等に勝手に自分のiTunesやWinAmpのライブラリを置いている人もいるようです。

さて、この”iTunes on Cloud”(仮称)の日本の著作権法上の扱いはどうなるのでしょうか?サーバはAppleの管理であり、コンテンツ配信に特化した有償サービス(たぶん)であること等々を考えると公衆送信(ストリーミングの場合)や複製(ダウンロードの場合)の主体はAppleであると判断される可能性は十分にあります(そもそも、この”iTunes on Cloud”は、違法であるとの地裁判決が確定してしまったMYUTAと構成がほとんど変わらないと思われます)。

“iTunes on Cloud”上でコンテンツを買う場合は、権利者はコンテンツの使われ方をわかった上でAppleにコンテンツ販売を許諾しているわけですから、あまり問題は起きないと思います。問題になるのは、自己所有のCDをリップしてクラウド上のiTunesライブラリに置く場合です。自分のCDを自分が操作してアップロードして自分だけで聴く場合でも、複製の主体(あるいは、公衆送信の主体)はAppleであるとされて、違法という解釈が出されかねません。

ここで、裁判官の「規範」が「自分が正規に買ったCDを個人として便利な形態で聞くのは自由である」であればよいのですが「レコード会社がCDを売った時はクラウド上に音楽コンテンツを置くことなど想定していなかったのだから、クラウド上に音楽コンテンツを置きたい消費者はそのような許諾を受けているコンテンツを改めて買い直すべき」だっととしたら違法にされてしまう可能性は高いと言えそうです。

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