無許可で宿泊客にWiiを貸し出して遊ばせていたホテルが著作権(上映権)の侵害で警察の捜索を受けたという事件があったそうです(神戸新聞の元記事)。
twitterなどでは「これ違法なの?」という意見が聞かれましたが、警察が動くような事件なのかどうかは別として違法であることは確かなようです。
1.TVゲームの画面をテレビに映すことは著作権法上の「上映」に相当します(なお、TVゲームの多くは判例上「映画の著作物」であるとされていますが、たとえそうでなくても(映画の著作物でなくても)著作物を画面に映すことは「上映」です。)
2.上映権は権利者の許可がないと行使できませんが、ゲームソフトを買った人は非営利で上映できる旨がライセンスに規定されているはずです。これとは別に、非営利・無報酬・無料の場合は自由に上映できる旨が著作権法に規定されています(38条1項)ので、個人が楽しみのために(非営利で)ゲームをプレイする際に上映権が及ぶことはありません。
3.ということで営利目的でゲームソフトを使う行為には(仮に料金を取らない場合でも)権利者の許可が必要になります。無許可で使うと著作権(上映権)侵害です。故意でやれば刑事罰の対象ですから警察が関与することもあり得ます。
4.このケースではゲームを「上映」しているのは客なので非営利・無報酬・料金無料のように見えますが、例の「カラオケ法理」により、ホテルが上映の主体と考えられ営利目的とみなされてもしょうがないと言えます。また、これとは別にゲームソフトのライセンス違反になるかもしれません(Wiiソフトのライセンスに今アクセスできないのではっきり書けなくてすみません)。いずれにせよ上映権侵害です。仮にゲーム機をレンタルするのではなく、部屋に1台ずつ置いてあってゲームソフトも台数分買ってあったとしても営利利用の許可を得ていなければ上映権侵害です。
では、マンガ喫茶などで客に店内で使うゲームを貸し出している場合はどうなのかというと、営利利用のライセンスを別途受けて権利者にお金を払っているらしいです。また、書籍の場合は、そもそも「上映」という概念がない(ページをカメラで撮影してテレビ画面に映せば「上映」になるのかもしれませんが)ので上映権が関係することはありません。なので、ホテルにマンガが置いてあってそれを客に閲覧させても何の問題もありまません(これが問題だったら定食屋や床屋に雑誌が置いてあるのもアウトになってしまいます)。なお、電子書籍を公衆に閲覧させるというケースで上映権が効いてくるのかは興味深いところです。
聞くところによるとホテルでのゲーム機の貸し出しはよくあるサービスらしいのですが、これらがちゃんと権利者のライセンスを受けているやっているサービスなのか、それとも単に大目に見られているだけで警察がいつでも捜査できる違法状態にあるのかはよくわかりません。この事件では「同署が偽装ラブホテルの立ち入り調査を実施した際に発覚した」ことにより警察の捜索に結びついたようです。
追加(11/01/13): はてブやtwitterのコメントを見ると誤解している人がいるようなので念のため説明しておきますが、ホテル内のケーブルテレビで使う業務用ゲームシステムや飛行機内で使うゲームシステムは権利者から業務用のライセンスを得てそれなりの料金を払っているので問題ありません。本エントリーで言っているのは家庭用ゲームソフトをゲーム会社の許可なく客に使わせる場合です。
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