プロダクト・バイ・プロセス・クレーム(製造方法によって物の発明を特定するタイプのクレーム)についての最高裁判決に伴い、特許庁の審査運用が変わったのは周知かと思います。
プロダクト・バイ・プロセス・クレームは物の構造は直接的にはわからないが、こういう方法を使えばこういう物ができるんだということがはっきりしている場合に有効で、通常は、化学・生物関係の発明で使われます。
自分は、化学・生物関係はまったく専門ではないので、この話は全然関係ないかと想っていました。しかし、ひょっとするとソフトウェア関連発明でも関係することもあるかもしれないと考えてみました。
特許法上、ソフトウェア(コンピュータープログラム)は物ですし、コンピュータープログラムを製造する方法(たとえば、プログラムジェネレーターのアルゴリズム)は観念できます。ただし、コンピュータープログラムの作成方法はわかるが、それがどう動作しているかはわからないというケースは従来型のプログラムではあり得ないと思います。プログラムを作成するためにはフローチャート(的なもの)が必要ですし、フローチャートがあるということは、どのようなステップがそのプログラムに含まれているか明らかということです。これはプログラムジェネレーターで自動生成する場合も同じで、できたプログラムがどういう原理で動いているかわからないというのは想定しにくいでしょう。
ただ、従来型プログラミングを離れて、機械学習の領域にまで踏み込むと必ずしもそうとは言えないかもしれません。ニューラルネット(これは一種のプログラムなので特許法上の物です)の学習方法に特徴があって、その結果、顕著な効果を発揮するニューラルネットが作れるとしたら、プロダクト・バイ・プロセス・クレームで表現するしかないかもしれません。ニューラルネット自体はブラックボックスでありその構造やステップを特定するのは困難(不可能?)だからです。たとえば、「xxxの特性を持つ入力データにより学習させたことを特徴とするニューラルネット」みたいな感じです。