もう一般の人はそろそろ飽きているのではないかと思います(もちろん当事者にとっては大変な話です)が、Apple対Samsungの特許訴訟(北カリフォルニア地裁の2回目)で、またAppleに有利な略式判決(最終判決の前の暫定的判決)が言い渡されました(参照記事(CNET)「サムスン、アップルのオートコンプリート関連特許を侵害–米裁判所が認める」)。
まず、Appleの米国特許8074172(Method, system, and graphical user interface for providing word recommendations: 単語の推奨を行なう方法、システム、および、グラフィカルユーザーインターフェース)をサムスン製品が侵害していると判断されました。通称「オートコンプリート特許」、iOSデバイスでの英文入力で使われる入力補助方式に関する特許です(今は仕様が変わってこういう風にはなってないですね)。おそらく、日本では同等特許は成立していないと思われます。
Appleが権利行使しているクレーム(クレーム18)のポイントを大ざっぱに書くと、入力画面とは別に候補画面に複数の候補を表示し、1)キーボードで区切り文字(スペース等)を入力すると最有力候補が入力される、2)あるジェスチャー(候補のタッチ)によりその候補が入力される、3)別のジェスチャーで候補が無視される、といった感じです。
侵害が認定されただけなので有効性の議論は残ります。匿名による(とは言ってもSamsungかGoogleによるのは見え見えですが)再審査が別途進行中です。優先日(実質出願日)が2007年でそんなに古くないので先行技術はありそうなしますが何とも言えません。
また、Samsungの米国特許7577757(Multimedia synchronization method and device:マルチメディア同期の方法とデバイス)が無効とされました。
この略式判決は、現在、進行中と言われているAppleとSamsungの和解協議にも影響を与えると思います。もう、Samsung的には金を払って早く解決したい、問題はいくら払えばいいかだというモードに入っているのではないかと推測します。
これに関して「アップル、コピー禁止条項の盛り込みを要求–対サムスン和解協議」という記事がCNETに載っています。ライセンスするのにコピー禁止というのはわかりにくいですが、原文記事では「コピー禁止」は”anti-cloning”です。要はライセンスはするけど、外観や機能の丸コピー製品は禁止するということで「デッドコピー禁止」と訳した方がわかりやすかったと思います。Appleは2012年のHTCとの和解においても、そして、1997年のMicrosoftとのクロスライセンス契約においても同様の条項を含めているようです。全面的にライセンスする(禁止権は行使しない)けどデッドコピーは禁止するというのはリーズナブルな条件ではないかと思います。