オランダ裁判所により、GALAXY(スマートフォンのみ、タブレットは適用外)の欧州のほとんどの国における販売禁止の仮差し止め命令が出されました(参考記事)。
この種の記事を見るときに注意すべき点は命令が出された根拠です。根拠が意匠権(記事によっては「デザイン特許」とか「デザインパテント」と訳されている場合あり)であれば、製品の外観を変えれば回避できますし(それでもメーカーにとって金型変えるのは大打撃でしょうが)、基本ソフトであるAndroidへの影響もほとんどないと言えます(米国ではアイコンデザインにも意匠権が及びますがこれも回避は容易です)。しかし、特許権が根拠の場合は一般に回避が困難であり、影響は一気に大きくなります。
今回の差し止め命令は、根拠が特許(しかも、実質的にソフトウェア特許)によるものなので影響が大きい可能性があります。さらに、一般的に、米国と比較して欧州はソフトウェア特許に対して消極的であるにもかかわらず、侵害が認定されたという点は注目に値します。なお、Appleのスマートフォン関連訴訟において、Appleの特許権に基づいた主張が裁判所に認められたのは今回が初めてとなります。
Android勢は一気に劣勢という感もありますが、今回の差し止めの根拠となった特許(欧州特許公報)はデジカメの画像管理関連であり、また、販売差し止めになったのはGALAXYのスマートフォンだけであり、タブレットが対象外になっていることから、問題となったのはSamsungによるカメラ関係の付加価値アプリであり、Android本体には関係ないという見方もできます(公報をちゃんと読み込めばもっとはっきりわかりますが、今ちょっと時間がありません)。
ところで、Apple対Samsungの知財訴訟ですが、Appleが特許権、意匠権、商標権、著作権というあらゆる権利を駆使してSamsungを攻撃し、Samsungもそれに対抗して反訴していますので、結構カオスな状況になっています。上記記事中でも引用されており、私も必ず読んでいるソフトウェア特許関連のブログFOSS PATENTSでApple対Samsungの訴訟についてまとめていますが、世界9カ国において19件の訴訟が進行中だそうです。