ScanSnapの新モデルが出たということで「この前出たばっかりなのに..」と思ったらなんと非破壊型(裁断なしで本を開いたままでスキャンできる)でした(参照記事)。
(写真はPFUのサイトより)
見開きにした本の湾曲を自動的に補正する「ブック補正」や、スキャン時にページをめくったことをセンサーで自動検出し連続スキャンできる「ページめくり検出」機能などが用意されており、高品質なスキャンデータを簡単に制作できる。読み取り速度は1枚当たり約3秒以下。
だそうです。300ページの本だと見開きでスキャンして約7分、ちょっと面倒ですが、ただページをめくっていくだけの作業なので音楽でも聴きながらやればすぐできそうです。少なくとも通常のフラットベッドスキャナーでスキャンするよりははるかに楽です。価格は59,800円、時がたてばもっと安くなるでしょう。大きさは210(幅)×156(奥行き)×383(高さ)ミリ、重量は約3キロなので、それほどかさばるわけではありません(はっきり言って裁断機の方がかさばります)。
自炊したくとも本を裁断するのがはばかられるケースも多いと思いますので、このような商品を待ち望んでいた人も多いのではないでしょうか?
この手の製品は今までもありましたが、自炊電子書籍用のスキャナーとして使うには画質の点で問題があったようです。しかし、今回の製品はScanSnapのブランドで出すのですからその辺は大丈夫でしょう(私は、一応、誰かの実機レビューを待ってから買いますが)。
では、この製品が著作権法的に見てどうなのか検討してみます。
著作権法的に言うと裁断するかしないかは関係ないので、従来型スキャナーであっても、非非破壊型スキャナーであっても複製は複製ということになります。つまり、自分で使う目的で自分でスキャンする分には合法、サービス事業者が他人のためにスキャンするのは現状のスキャン代行業と同じで(権利者の許諾がない限り)違法の可能性が高いということになります。なお、本が自分の所有物である必要はありません。
非破壊型スキャナーで問題になり得るのは、著作権法30条(私的使用目的複製)の例外になっている「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器を用いて複製する場合」のさらに例外として附則5条の2で「当分の間、これらの規定に規定する自動複製機器には、専ら文書又は図画の複製に供するものを含まないものとする」とされているので、たとえば、中古本買取店の店頭に非破壊型スキャナーを置いて客がスキャンしたらすぐ原本を買い取る商売も(倫理的問題は別として)著作権法上はOKになってしまいます。カラオケ法理によって店が複製の主体とされる可能性はありますが、だとしてもパチンコの3店方式のようにすれば回避されてしまうでしょう)。
附則5条の2を廃止せよと言う話は前からありましたが、再燃する可能性もあるかと思います。
もちろん、仮に店頭使用が違法になったところで、自分の家でのスキャンを禁止することはできないので、本を買ってスキャンして元の本を中古書店に売って(以下繰り返し)は合法的に行えます(これまた倫理的問題は別)。今までも裁断本は同じことができていたわけですが、今回はページをめくっただけのさらの本でできてしまうので影響は甚大でしょう。
初めて消費者向けのCD-Rライターが登場したとき、レコード業界の中の人が「悪魔の機械」と呼んだのを(リアルに聞いたのを)覚えていますが、出版業界の中の人にとって非破壊スキャナーも同じではないかと思います。
では、どうすればよいかというと、手元に原本を置いておきたくなるような装丁の本を作る、電子書籍を安くする(スキャンしてOCRする手間とOCRエラーを加味すれば、電子書籍を買った方が得という価格設定にする)、そして、やや禁じ手ですがフィジカルなおまけをつけるくらいしかないのではないかと思います。
ピンバック: 非接触スキャンSV600で巻物をスキャンしてそのデータを印刷してみました。これはおもしろい。 | 東京ノマド営業所
ピンバック: メモ20130614 | Nacky – Snowland.net
ピンバック: 裁断せずに自炊可能!次世代スキャナが満を持して登場だ! 他 日録 06月14日版 | Shigesato.com
ピンバック: ツカエル!ネットの話題 » Blog Archive » 06月14日 05:00版
ピンバック: 非破壊型スキャナが出た? | あたしンちのおとうさんの独り言