【お知らせ】EnterprizeZineにビッグデータ関連記事を寄稿しました

翔泳社のIT Initiativeに寄稿した記事『「ビッグデータ」テクノロジー戦略を現実的に考える』がEnrterpriseZineにも転載されました。一般にIT Initiativeへの寄稿記事はだいたい1ヶ月遅れでEnrterpriseZineに転載されるようなので、早く読みたい方はIT Initiativeを申し込まれるとよろしいんじゃないかと思います(無料)。

さて、本記事は、「ビッグデータ」も他のIT関連用語と同様ちょっと混乱が見られるので少し整理して考えてみてはいかがですかという内容が中心です。「ビッグデータ」を「エマージング・ビッグデータ」と「トラディショナル・ビッグデータ」の2カテゴリーに分類して検討することを提唱しています。簡単に言うと、「エマージング・ビッグデータ」はMapReduceやNoSQLを活用する世界、「トラディショナル・ビッグデータ」はRDBMSを活用する世界です。もちろん、両者は排他的ではないですし、境界線も明確なわけではないですが、このようなカテゴライズを行なうことで、議論の混乱をある程度防げるのではないかと思います。また、『「ビッグデータ」すなわちHadoop採用だ』というような近視眼的なテクノロジー選択を防ぐ効果もあるのではないかと思います。

ご興味ある方は是非ご一読ください。

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【小ネタ】確認会社が知らない内に解散されてしまうリスクについて

平成18年に施行された会社法改正により今では資本金1円でも株式会社が設立可能になっているのはご存じかと思います(もちろん、相応の運転資金は別途必要ですが)。昔は株式会社設立のためには資本金が最低1,000万円は必要で起業の障壁のひとつになっていました。

この改正直前の経過措置として、5年内に増資するか、解散するかという条件付きで資本金1,000万円以下で株式会社を設立できる特例期間がありました。この5年内の増資、あるいは、登記事項からの解散事由削除を忘れていると自動的に会社が解散になってしまいます。で、実際にそのような目に遭った人の話がBLOGOSに載っていました。法人登記簿を取りに行ったところ、会社が既に解散状態になっており、再登記が必要であるとのこと。

会社が解散になっていても、法人税や厚生年金は払い続けていたようで、役所間の相互チェックはまったくなされていないようです(既に払った税金や保険料はどうなってしまうのでしょうか)。また、「このままだと会社が解散になってしまうよ」との通知もまったく来ていなかったようです(ただし、法務局の話では通知が行っているはずだとのことであり、この点では話が食い違っています)。

株式会社テックバイザージェイピーもこの会社と同様に平成17年に確認会社としてスタートしていますので急に心配になって、法人登記謄本を取ってきましたが、ちゃんと解散事由は削除されており、会社は存在していました(ほっ。

当時の記憶がよみがえってきましたが、改正会社法が施行された時、会社設立時に定款作成をお願いした行政書士さんから直しておいた方がよいんじゃないですかと連絡があって、そのついでに直していたようです。行政書士さんとお付き合いがなければ見逃していたかもしれません。

一般的に法律的な手続きをする時には士業の人に委任せずとも自分でやってしまうこともできます。特に個人事業主や小規模企業の場合には、単に書類作って出すだけの作業に手数料を払うのはもったいないという気持ちがあるのはわかります。しかし、自分でやってしまうと、手続きの時点ではよいとしても、その後のフォローがおろそかになって手痛い目に会う可能性がないとは言えません。

書類作成だけの作業に何十万円も払うのはどうかと思いますが、数万円の出費であれば、その後のフォローや制度改正によるリスクの保険として払っておくのは賢い選択と言えるのではないでしょうか?たとえば、意匠や商標の出願も自分でやろうと思えばできないことはないのですが、数万円の手数料であれば弁理士に頼んだ方が、リスクを加味すれば結局お得と言えるのではと思います(ものすごいポジショントークですみません(笑))。

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【速報】FacebookがYahoo!の特許攻撃に逆襲の件

少し前に米Yahoo!がfacebookに特許侵害で訴訟しました(参考記事)。良いか悪いかは別として、本業の先行きが怪しくなると知財に関して攻撃的になるのはよくあるパターンです。これに対してFacebookは自社の特許権でYahoo!を逆提訴しました(参考記事)。これまたよくあるパターンです。

Facebookの特許ポートフォリオは他社と比べて見劣りしており、それを拡充するためにIBMから特許を購入したという見方もありました。しかし、それに頼るまでもなく既存の特許ポートフォリオだけでもYahoo!を逆提訴するのは十分だったようです。Facebookは今までもソーシャルネットワーキング関連にフォーカスして社内で発明するだけではなく、他社から特許権を取得していますので、それなりに攻撃力はあると思われます。

以下が今回の逆提訴に関連した特許です(名称の日本語訳は栗原による)。これらの特許10件のうち、Facebook社内で開発されたものは最初の2件だけで残りは以前に他社から購入していたものです。さすがに全部は見ている時間はないですが、重要ぽいものの中身を後日紹介するかもしれません(あくまで予定)。

米国特許番号

名称

名称(日本語)

備考

7,827,208Generating a feed of stories personalized for members of a social networkソーシャルネットワークのメンバーにパーソナライズされたストーリーのフィード生成flickrがこれに抵触すると主張しているようです
7.945,653Tagging digital mediaデジタルメディアのタグ付けザッカーバーグ自身の発明
6,288,717Headline posting algorithm見出し表示のアルゴリズムDietpowerという会社から購入
6,216,133Method for enabling a user to fetch a specific information item from a set of information items, and a system for carrying out such a method複数の情報項目から特定の情報項目取得を可能にする方法とその方法を実現するシステムエージェントを使ったマルチメディアデータの検索関連のアイデア。元はPhilips社の発明
6,411,949Customizing database information for presentation with media selectionsメディア選択による表示のためのデータベース情報のカスタマイズ同じくマルチメディアデータ検索関連、元はPhilips社の発明
6,236,978System and method for dynamic profiling of users in one-to-one applications1対1のアプリケーションのユーザーの動的プロファイリングのためのシステムと方法静的・動的プロファイルからユーザー・プロファイルを生成するアイデア、元はNYUの発明
7,603,331System and method for dynamic profiling of users in one-to-one applications and for validating user rules.1対1のアプリケーションのユーザーの動的プロファイリングとユーザー・ルールの検証のためのシステムと方法上記の関連発明、元はNYU
8,103,611Architectures, systems, apparatus, methods, and computer-readable medium for providing recommendations to users and applications using multidimensional data多次元データを使うユーザーとアプリケーションに推奨情報を提供するためのアーキテクチャー、システム、装置、方法、コンピュータ可読媒体データベース検索関係か?(中身を読み込まないとわかりません)元はNYUの発明
8,955,896System for controlled distribution of user profiles over a networkネットワーク上でユーザー・プロファイルをコントロールされた形で配布するためのシステム中身を読まないとよくわからないです。Cheah IP LLCという会社から購入
8,150,913System for controlled distribution of user profiles over a networkネットワーク上でユーザー・プロファイルをコントロールされた形で配布するためのシステム上記の関連発明

個人的予想ですが、Facebook対Yahoo!は、Apple対SamsungやOracle対Googleのような泥沼にはならず(Apple対Samsungに関しては和解の可能性もでてきたようですが)、クロスライセンスで和解という形で収まるのではないかと思います。

特許を取得するのは他社を訴えるためだけではありません。このように他社から特許攻撃を受けた時の防衛策として自社の特許ポートフォリオを拡充しておく(自社で発明するだけではなく他社が不要な特許を買っておく)戦略は重要です。

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カバー曲のCD制作における編曲権処理について

ちょっと前になりますが、弁理士会主催の「音楽著作権ビジネスの課題と現状」という研修を受けてきました。講師は安藤和宏氏です。安藤氏と言えば『よくわかる音楽著作権ビジネス』等の音楽業界の実務経験に基づいた書籍を数多く著しておりこの分野では第一人者です。法律の世界と実務の世界は必ずしも完全に一致しているわけではない(特に音楽業界には業界の掟的な教科書に書いてない要素が多いと思います)ので、実務経験豊富な専門家の話を聞ける機会は貴重です。そういうこともあってか会場はかなりの満員でした。

お話の内容は(こちらの期待どおり)法律解釈な話よりも現場の実務が中心で大変興味深く聞けました。ただ、たとえば「最近はレコーディングの予算が削られて最後までPROTOOLSのみでトラックを仕上げるケースも増えており、CDの音の厚みがなくなっている」なんて話は個人的には興味深く聞けたのですが、他の弁理士先生にとってはイメージ沸きにくい話であったような気もします。(余談ですが、それでも比較的レコーディングにお金をかけられるジャンルもあって、それはジャズとクラシックであるそうです。理由は、これらのジャンルで音が悪いとオーディオ・マニアから(音楽マニアではない)からクレームが来るからだそうであります。)

さて、最後の質問コーナーで、かねてから聞きたかった質問をすることができました。それは「カバー曲をCD化する時に翻案権の許諾を著作権者から直接もらっているのか?」という質問であります。

安藤氏の答を書く前に、私がこの質問をした意図について書いておきます。

一般的な音楽著作物は著作者(作曲家、作詞家)がJASRACに著作権を信託譲渡して管理してもらっています。これにより、利用する側は直接的・間接的を問わずJASRACに規定の料金さえ支払えば、JASRAC管理の音楽著作物を利用できるわけです。

しかし、JASRACは著作権法27条の翻案権(音楽の場合は編曲権に相当)は管理していません。したがって、他人の曲を編曲して使用する場合には、JASRACに利用料を払うだけでは足りず権利者(典型的には作曲家が契約している音楽出版社)から翻案権の許諾を得る必要があります。さらに言えば、著作者人格権のひとつである同一性保持権(著作権法20条)の問題もあるので、厳密に言えば、著作者(作曲家本人)に同一性保持権を行使しない意図を確認する必要もあります。

作曲家が書いた譜面通りに弾くことが基本のクラシックの世界とは異なり、ポップ・ミュージックではカバー曲にアレンジを加えるのは当然です。かと言って他人の曲をちょっとでもアレンジして使うたびにJASRACに加えて著作権者と著作者から許可をもらっていたら結構大変です。

ということで、JASRAC管理曲の翻案権に関して法律を厳密に守っているのか、それとも暗黙の了解でやっているのかというのが質問のポイントです。

さて、この質問に対する安藤氏の答は私のほぼ予想通りで「昔はしていなかったが、大地讃頌の件があって以来、翻案権の許諾を取ることが多くなった。ただ現在でもすべてのケースでしているわけではない。私が相談を求められてたなら音楽出版者(=著作権者)に許可を取ることをお勧めしている」とのことでした(同一性保持権についても聞いておくべきでしたが聞き忘れてしまいました)。

大地讃頌事件というのはご存じの方も多いと思いますが、合唱曲でおなじみの大地讃頌という曲をPe’Z(ペズ)というジャズバンド(ミクスチャーと言った方がよいかも)がカバーしたCDに、作曲者の佐藤眞氏が編曲権と同一性保持権侵害に基づき販売停止を求めて訴えた事件です(参照Wikipediaエントリー)。レコード会社側はCDの出荷停止・回収により和解しました。法廷の場に出るまでもなく和解で終わってしまったので判例集や法学書にはあまり書いてないと思います。

私も、Pe’Zの問題となった大地讃頌の録音を聞いたことはありますが、別に作曲者の名誉を毀損するような演奏ではまったくありません。ただ、ジャズ系の音楽の一形式としてわざと「素朴」に演奏しているスタイルなので、クラシック系の作曲家であればちょっとお気に召さないかもしれません。そして、日本の著作権法では、客観的には名誉の毀損にあたらなさそうなパターンでも著作者の「意に反して」いれば同一性保持権の侵害を主張できてしまいます。とは言え、素材を解体して演奏者の解釈を加えて別の作品へと昇華させていくのがジャズという音楽の本質だと思うので、そこで同一性保持権などを持ち出されると困ってしまいますね(それを言うなら日本中のジャズクラブでは毎日のように同一性保持権が侵害されています)。

一般論になりますが、法律の規定と現状に乖離がある場合、「まあ、別に実害が生じているわけではないのだからいいんじゃない」みたいな姿勢でほっておくと、突然に権利行使をする人が出てきたりして問題になるリスクがありますが、まさにそのような例だと思います。最近問題になった自炊代行サービスなんかもそのようなケースと言えるかもしれません。

いずれにせよ、たとえば、ボーカロイドのカバー曲CD等の販売を考えている方(特に大胆なアレンジを行なう場合)は安全のために音楽出版社の許可はもらっておいた方がよいのではないかと思います。

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【商標小ネタ】アイホンのチャイム音が米国で商標登録されている件

スマートフォンのiPhoneではなく、インターホンのアイホンのお話です。

中日新聞の記事『アイホン、北米で売り上げ最高に』によりますと、米国でもテロや銃乱射事件の影響で防犯意識が高まり、テレビ付インターホンが売れており、アイホン社は、

「ブランドイメージの定着」を狙って昨年1月、日本でおなじみの「ピンポン」という呼び出し音を、米国で商標登録。あの手この手で攻勢を強めている

ということです。商標の本質的機能は消費者(需要者)が商品やサービスの出所を識別できることにあるわけですが、マークや名称だけではなく、音でも出所識別機能があれば、商標として登録できるという制度です。米国を初めとしていくつかの国では採用されていますが、日本ではまだ採用されていません。

アイホンの米国登録サウンドマークですが、検索してみると登録番号は85063162でした。Description of Markは以下のようになっています(翻訳は栗原による)。

The mark consists of a sound. The mark consists of an electronic chime playing an E5 quarter note, followed by a C5 half note, and E5 quarter note, and a C5 half note. The sound is similar to a simple doorbell chime that is repeated.

本商標は音から成る。四分音符のF5、八分音符のC5、四分音符のF5、八分音符のC5の電子チャイム音から成る。普通のドアベルが繰り返し鳴る音に似ている。

出願時には実際の音声ファイルを提出する必要がありますが、登録上はこのように文章で表現してあり、何か争いがあった時に音声ファイルを使うという運用のようです。

USPTO(米国特許商標局)のサイト内の子供向けの教育ページでは、代表的なサウンドマークが、こちらは音声ファイル付きで紹介されています(あくまでも教育用のページなのですべてのサウンドマークが網羅されているわけではありません)。日本の消費者にとっては、Intelのチャイム音などがなじみ深いと思います。

ところで、サウンドマークの話が出るとよく引き合いに出される例にハーレイダビッドソンのエンジン音というのがあると思います。しかし、ハーレイ社が出願したのは確かですが、その後、他社からの異議申立て(V型エンジンのエンジン音だけでは他社と識別できないという理由)があり、結果的にハーレイ社は出願を取り下げたようです(参照記事)。

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