今回は「ゆるキャラ」という名称自体の商標についてです。個別のゆるキャラの権利をどう守るかについてのお話はまた別途(これはこれでおもしろいトピックです)。
「ゆるキャラ」という言葉がマンガ家・コラムニストのみうらじゅん氏の発案であることは疑いがないと思います(自分はリアルタイムで見てましたし)(参照Wikipediaエントリー)。しかし、みうら氏が(正確に言えばみうらじゅん事務所が)商標登録をしていたことは最近になり知りました。Wikipediaによれば他人に登録されないための防衛目的だそうです。
現時点で見るとみうらじゅん氏により以下の登録がされています。
- 16類(文具、紙類等)(扶桑社との共有(写真・写真立てのみみうらじゅん氏が単独所有))
- 9類(コンピュータ、ゲーム、CD/DVDメディア、携帯ストラップ等)
- 14類(装飾品、時計、キーホルダー等)
- 25類(被服類)
- 28類(ぉもちゃ、人形等)
- 30類(菓子類)
- 32類(非アルコール飲料)
マイナビニュースに載っていた週刊ポストの記事によると、「ゆるキャラ」がみうら氏の登録商標であるために、「ゆるキャラ」の名称を避けて「ご当地キャラ総選挙」という名称でイベントを行なったことがあるようですが、少なくとも上記の登録商標の指定商品から見るに「ゆるキャラ」を使った名称のイベントを行なってもみうらじゅん氏の商標権を侵害することはなさそうです。仮に、「イベント運営」で商標登録していても「ゆるキャラ」がサービスの出所である(イベント運営会社のブランド名である)と認識される使い方をしない限り商標権の侵害にはなりません。まあ、みうら氏に敬意を表してとか、後々のトラブルを避けるために念のためということであればわからないではないですが。
さて、これとは別に個人によって35類(広告間連サービス)、41類(イベント運営系サービス等)を指定して「ゆるキャラ」商標が昨年の3月に出願されていますが、いずれも拒絶査定となっています(おそらく、理由は公序良俗違反(4条1項7号)か他人の業務との混同(4条1項15号)ではないかと思います)。審査記録を見ると、刊行物等提供(情報提供)がなされています。おそらく、みうらじゅん氏関係者が拒絶査定に導くために情報提供したものと思われますが、料金(たかだか600円ですが)を払わないと内容が閲覧できないので詳細はわかりません(仮に閲覧しても情報提供は匿名でもできるので誰が提供したかはわからない可能性があります)。
一般的に、他人の業務と紛らわしい商標、著作権を侵害する商標(典型的にはネットで広く使われているアスキーアート等)、一般名詞化してそうな言葉の商標等、登録すべきでない商標登録出願を拒絶に導くためには、特許庁の情報提供制度を利用して、称呼を提出して拒絶とすべきことを主張できます。必ず拒絶にできるわけではないですが、審査官が参考にしてくれます。商標がいったん登録されてから取消・無効するのは時間もお金もかかりますので、登録すべきでない商標登録出願を発見した場合には登録される前に情報提供しておくことが重要です(匿名での情報提供も可能です)。特許庁料金は無料です(弊所の場合、料金5,000円〜で書類作成代理します)。
さらに、これとはまた別に「ゆるキャラまつり」(紙・文房具類、ショー運営等)が個人によって、「ゆるキャラメル」(キャラメル)がナムコによって、「ゆるキャラムネ」(清涼飲料等)が北海道の菓子メーカーによって登録されていますが、もうこれはしょうがない気がします。