伊藤園の「理想のトマト」というジュースがあります。濃くて大変おいしいジュースなのですが、ネーミングもなかなかナイスだと思います。そして、しっかり商標登録もされています(他にも「理想の野菜」、「理想のフルーツ」、「理想のお茶」が伊藤園名義で登録済です)。
以前のブログ記事で、商品の材料、品質、産地等をそのまんま商標にした記述的商標は原則的に登録されないと書きました。たとえば、「おいしい牛乳」はこのような例になると思います。「おいしい牛乳」という名称の商品を販売しているメーカーは「明治おいしい牛乳」や「森永のおいしい牛乳」等、識別力のある言葉を付加してようやく登録しています(この商標登録によっては、他社が(単に)「おいしい牛乳」という名称の商品を販売することを禁止できませんので権利としてはあまり強力ではありません)。
「理想のトマト」も品質と材料だけなので記述的商標ではないかという見方もできるかもしれませんが、特許庁の判断としてはそうではないとされたようです(使用による識別性の発生を問われれるまでもなく登録されています)。そもそも「理想の〜」の後に食材が来る言い回しがそれほど一般的ではなくちょっとひねったものである点も大きいと思います。
さらに調べてみると実は「理想の〜」パターン(〜には商品の種類が入る)の商標登録はけっこうありました。「理想の保険」(AIGスター生命)、「理想のプリン」(森永乳業)、「理想の梅酒」(宝ホールディングス)等々です。
この種の記述商標ぎりぎりの商標は独占できるメリットが大きいので、拒絶のリスクを承知の上でダメ元で出願してみる価値はあると思います。特許の場合もダメ元で最初は権利広めで出願してみることは一般的です。
なお、特許の場合は権利広めで攻めてみて駄目だった場合(拒絶理由を通知された場合)には補正して権利範囲を狭くすることができますが、商標の場合は商標自体の補正は実質的に不可能なので、駄目だった場合は出願し直しになる点に注意が必要です。