ニコニコ動画でEMIのCD音源(ケミカルブラザーズ、ダフトパンク等)が利用可能に

Internet Watchに「ニコニコ動画、EMIミュージック・ジャパンの音楽原盤を利用可能に」という記事が載りました。

ご存じのように、ニコニコ動画(およびYouTube等の動画サービス)はすでにJASRAC等の著作権権利団体との契約により、(洋楽を含む)これらの団体の管理楽曲(要するにほとんどの曲)を使用することができるようになっています。ニコニコ動画の収益から一定割合がJASRAC等に支払われ、それが著作者(作詞家・作曲家)に分配されますので特に誰も損をすることはありません。

しかし、CD音源を使う場合には作詞家・作曲家の権利だけではなく、CD製作者の著作隣接権(通称、原盤権)の処理を行なう必要があります。原盤権にはJASRACのような権利の集中管理の仕組みがありませんのでユーザーが原盤権の権利処理を行うことは現実的に不可能でした。

とは言え、権利者がOKと言えば何でもできるのが著作権の世界ですから、別途契約で原盤権を自由に使えるようにする(そして対価が権利者に回るようにする)ことは何の問題もありません。人と人の間の契約の話ですから法律を改正する必要すらありません。

昨年(2010年)の3月には著作権管理団体のJRCがUSTREAMと提携することで、USTREAMにおいて一部楽曲の原盤権まで含めた利用が可能になりました。正直、使える楽曲は限定的でしたが日本の著作権制度における重要な一歩と言えると思います。

その後、ニコニコ動画も2010年12月にエイベックスの一部の原盤を使用可能にしました(関連記事)。まあ、エイベックスはニコ動運営会社のニワンゴの親会社のドワンゴの大株主なのでまあわかります。

今回はそういう事情を離れてより一般的な洋楽楽曲の音源が使えるようになったことが大きいですね。使える音源のリストはまだ限定的(発表時点で301曲)ですが、けっこうメジャーな曲(ダフトパンク「ワン・モア・タイム」、ケミカルブラザーズ「ミュージックレスポンス」等々)も含まれています。」ケミカルやダフトパンクなどの無機質なクラブ系の曲はテレビ番組やCMでもBGMやSEで使われることが多いですし、動画サイトの投稿作品や生放送のBGMでも使いやすいのではないかと思います。

また、これと時期をほぼ同じくして、株)ランティスが原盤権を所有する「涼宮ハルヒの憂鬱」関連楽曲、「らき☆すた」関連楽曲の原盤権の利用が可能になったことも発表されてますが、あんまりこの辺は詳しくないのでちゃんとコメントできません。

原盤権の包括処理(報酬請求権化)は大変な話のように思われるかもしれませんが、既にテレビやラジオなどの放送では法律で手当てされています。テレビ局やラジオ局がCD音源を使う場合には、いちいち原盤権者に許諾をもらう必要はありません。使いたい音源を使って事後報告すれば(そして所定の料金)をよい仕組みになっています。ニコ動をはじめとする動画サイト(少なくともニコ生などのストリーミング系サイト)は放送のような存在になりつつありますから原盤権の包括処理は必然的な流れと言えます。個人的には著作権法改正で(現在の放送と同じように)強制ライセンス化してもよいと思うのですが、まあそこまで行かなくても権利者側と動画サービス提供側の合意による提携がもっと進むことを期待します。

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