「Appleが「app store」の商標申請 Microsoftが異議」という記事がITmediaに載っています。以下簡単に説明します。
商標の機能は自社の商品(サービス)を他社のものと識別することです。ゆえに、識別性がない商標は登録されません。典型的なケースはその商品(サービス)の普通名称です。「パソコン」という名称をパソコンという商品の商標として登録することはできません。
商標が登録されないパターンのもうひとつの例として「記述的商標」というものがあります。その商品の産地、販売地、品質、原材料等々をそのまんま表わした商標です。たとえば、「おいしい牛乳」だとか「はちみつレモン」だとかがそれに相当します。「おいしい牛乳」の場合には、たとえば、「森永のおいしい牛乳」といったように苦肉の策でメーカー名を付けて登録に持ち込んでいます。
「記述的商標」が登録されるケースもあって、それは商標の継続的使用によりそれが消費者に有名になり、識別性を確保したと判断されるケースです。このような使用によって得られた識別性を”secondary meaning”と呼びます。このような使用による識別性確保の例としては「サッポロビール」などがあります。
この辺の仕組みは日本も米国もほとんど同じです。で、ポイントは、消費者は”App Store”という言葉を聞いた時に「一般にアプリケーションを売ってる店(サービス)」と思うのか「あのアップル社のアプリケーション販売サービス」と思うのかということです。マイクロソフトは前者であると考え、”App Store”は「そのまんま」の商標で識別力がないので、登録すべきでないと異議申立したわけです。個人的には、App Storeと言えばApple、 AppExchangeと言えばSaleforce.com等々と十分識別力はあると思いますが、それはIT系の仕事をしているからであって、米国の一般消費者の感覚がどちらなのかは正直ちょっとわかりかねますので判断できないですね。裁定の結果を待ちたいと思います。
そういえば、一昨年のSalesforce.comのイベントの記者会見でマーク・ベニオフが「App Storeという名前はAppleにくれてやった」というような発言をして、隣のパーカー・ハリスが苦笑いというシーンがあったのを覚えています。
米国の商標検索システムで調べると、Salesforce.comもAPPSTORE(ブランクなし)という商標を2006年6月に出願していますがその後自ら放棄し、結局AppExchangeという名称を使い始めました(AppExchangeはその後商標として登録されています)。まあ詳しいことはよくわかりませんが何か一悶着あったということかもしれません。