グーグルとオラクル:邪悪なのはどっちか?

グーグルCEOの行為は”邪悪”だった』:オラクルCEOエリソン氏、L・ペイジ氏を語る」なんて記事がCNETに出ています。エリソン氏がインタビューにおいて、グーグルに対する知財訴訟におけるその企業姿勢について、グーグルの企業モットーである”Don’t be Evil”を引き合いに出して批判したというお話であります。

オラクル対グーグルの裁判は、アップル対サムスン裁判の陰に隠れて目立たなくなっている感もあるので、現状どうなっているかをここで簡単にまとめておきましょう(参考資料:WikipediaのOracle v. Googleのエントリー等)。

この訴訟は、オラクルが、買収したサンマイクロシステムズのJava関連の著作権と特許権をAndroidが侵害しているということで、2010年7月に北カリフォルニア連邦地裁でグーグルを訴えたことに始まります。

まず、特許権の方ですが、米国特許6061520(静的初期化を実行する方法とシステム)およびRE38104(生成されたコード内のデータ参照を解決する方法と装置)が対象になりました(発明の名称の日本語訳は栗原による)が、いずれについてもAndroidは非侵害という判決が2012年5月に出ています(なお、RE38104の発明者はジェームス・ゴスリンです)。

この件についてはOracleは控訴していません。

著作権の方ですが、rangeCheck()というJavaの短いコード(わずか9行)、テスト・ファイル、37個のAPI(実体は呼び出し関数とそのための変数定義をしたヘッダーファイルです)とそのドキュメンテーションを、グーグルがAndroid OSにコピーし、オラクルの著作権を侵害したという訴えです。

rangeCheck()およびその他のコードの一部についてはグーグルの侵害が認められています(しかし、あまりにも短いコードのため賠償金額はゼロ)。APIについては、そもそも著作権による保護の対象ではない(ゆえに、侵害や”fair use”を検討するまでない)という判決が出されました(以下に判決文を一部引用、日本語訳は栗原による)。

“So long as the specific code used to implement a method is different, anyone is free under the Copyright Act to write his or her own code to carry out exactly the same function or specification of any methods used in the Java API. It does not matter that the declaration or method header lines are identical.”

「メソッドを実装するために使用される特定のコードが異なっている限り、何人もJava APIで使用されている任意のメソッドとまったく同じ機能を実行する独自のコードを著作権法にしたがって作成することができる。宣言やメソッドのヘッダー行が同一であるかどうかは関係がない」

著作権の方についてはOracleは2012年10月に控訴しています。ここでは、37個のJava APIのみが問題とされており、オラクルとしてはAPIは著作権の対象ではないという第一審の判断を覆すことを狙うことになります。

著作権法の目的は独創性のある表現の保護と公共の利益のバランスにあるわけですから、実装のコードが著作権で保護され得るのは当然である一方で、APIは著作権の保護対象とすべきでないと思います。そうでなければ異機種システム間での相互運用が困難になり公共の利益が著しく阻害され得るからです。

ということで、私見としては、APIの著作権侵害を主張する方が「邪悪」だと思うわけです。

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