マイクロソフトの値千金の特許を分析する(2)

マイクロソフトの対Android訴訟関連の特許分析の2回目です。今回は、米国特許6339780 “Loading status in a hypermedia browser having a limited available display area”(表示領域が限られたハイパーメディアブラウザ上のローディング状況”について見ていきます(Google Patent上の公報データ)。出願日は1997年5月6日です。Barnes&Noblesの電子書籍端末Nookに対する訴訟において侵害の根拠とされた特許のひとつです。

明細書中の図を見るとハンドヘルドPCなんて呼ばれていた時代のWindows CE機を想定した発明であったことがわかり、時代を感じさせます。そういえば「ハイパーメディア」という言葉も、現在では、あの方の肩書き以外ではあまり聞く機会がないような気がします。

さて、この特許のポイントですが「一発芸」のような発明です。ブラウザのウィンドウ上にコンテンツがロードされる時にウィンドウの隅っこにロード中を表す小さいアイコンのような画像を表示します(上記図2の64がそれにあたります)。ロードが終わると64の画像は消えます。画面が小さい機器においてコンテンツの表示をできるだけ邪魔しないようにしつつ、ロード進行中を表す表示ができることがメリットとされています。

クレームもほぼそのまんまです(翻訳は栗原による)。

1. A hypermedia browser embodied on a computer-readable medium for execution on an information processing device having a limited display area, wherein the hypermedia browser has a content viewing area for viewing content and is configured to display a temporary graphic element over the content viewing area during times when the browser is loading content, wherein the temporary graphic element is positioned over the content viewing area to obstruct only part of the content in the content viewing area, wherein the temporary graphic element is not content and wherein content comprises data for presentation which is from a source external to the browser.

限られた表示領域を有する情報処理機器上で実行するためにコンピュータ可読媒体上で実現されたハイパーメディア・ブラウザであって、当該ハイパーメディア・ブラウザは、コンテンツを見るためのコンテンツ表示領域を有し、ブラウザがコンテンツをロードしている間に一時的グラフィック要素をコンテンツ表示領域に表示するよう構成されており、当該一時的グラフック要素はコンテンツ表示領域の一部だけを隠すようにコンテンツ表示領域上に位置づけられており、当該一時的グラフック要素はコンテンツではなく、コンテンツはブラウザ外部の情報源からの表示データから成るブラウザ

他のクレームも、クレーム1にロード中表示をアニメーションにする等々の限定を加えたものか、あるいは、発明のカテゴリーを変えただけのものになっています。

個人的見解ですが、これを「イノベーション」と呼ぶのはちょっと語弊があると感じてしまいます。日本ですと、たとえ、1997年時点でも、1)コンテンツのロード中表示を行なうのは技術常識、2)コンテンツが見えやすいように小さな表示を使うのは技術常識、3)両者の組み合わせに特に技術的阻害要因はない、ので進歩性なしとされてしまう可能性が高いような気がします。

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