TSUTAYAで客が買った本をその場で裁断してスキャンさせてくれる「書籍自炊サービス」を始めたようです(参考画像)。裁断作業は店員がやるようですがコピー操作は客自身がやりますので、著作権法30条の私的使用目的複製の要件は一応満たしています。また、自分で買った本を自分用にスキャンするわけなので、権利者にも特別な損害を与えることはないと言ってよいでしょう(将来の電子書籍版の収益機会が奪われるという議論はあるかもしれませんが)。
しかし、これも、もし裁判沙汰になったら「カラオケ法理」によって、TSUTAYAは自己所有・管理のスキャナーを客に使わせて利益を得ているので複製の主体はTSUTAYA、ゆえに、私的複製の範囲外とされてしまいそうな気がします。もちろん、ロクラクII最高裁判決でも明らかになったように、「カラオケ法理」の適用は規範的に(裁判官が考えるあるべき姿に合致するように)行なうことになっているのですが、「自炊の森」は権利者に損害を与えているので複製の主体は店、TSUTAYAの自炊サービスは権利者に損害を与えていないので複製の主体は客という解釈はかなり強引な気がします。
また、「TSUTAYAの自炊サービスは権利者にも特別な損害を与えることはない」と最初に書きましたが、TSUTAYAの隣に裁断本買います・売りますの店が出来てしまったりするとこの状況も変わってしまいますね(そこまで行かなくても裁断本のネットオークション等での流通は既に行なわれていますし)。
やはり著作権法30条は、「公開された著作物は私的使用目的のために複製できる。ただし、権利者に不当な損害を与える場合を除く」というような規定ぶりにして、不当な損害の例を「基準」として例示して、本当にもめた時だけ裁判で争うというやり方しかないような気がします(このやり方でも問題山積なのは承知です)。
追加情報(11/02/16): ITmediaに関連記事が出ました。一部店舗で行なっている実験的サービスで他店舗への展開は今のところないようです。
ピンバック: Tweets that mention TSUTAYAも自炊サービスに参入! | TechVisor Blog -- Topsy.com