Kindleのtwitter連係機能は「引用」として処理されるか?

昨日のエントリーでKindleのtwitter(およびfacebook)連動機能について書きました。単に書籍コンテンツをディスプレイで読めることだけが電子書籍の価値ではないという点は重要です。ソーシャル・コンピューティングと組み合わせてこそ、紙の本では実現できない、真の電子書籍のエクスペリエンスが提供されるのです。

さて、Kinldleもいずれは日本語化されると思われますが、twitter連係機能が日本でも導入されたらどうなるでしょうか?ネットのクチコミで自分の本が売れる機会が増えてうれしいという権利者も多いと思いますが、自分の本を勝手に切り貼りして利用するとはけしからんと思う権利者もいるかもしれませんね。

日本の著作権法では、「引用」が権利制限(著作権者の権利が及ばない場合)のひとつとして明記されています。

32条1項 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

ここで、具体的にどのような条件が必要であるかは法文上では明確ではないですが、解釈論としては、(1)自分の創作と引用部分が明確に区別できること、および、(2)本文が主で引用が従の関係になければならないこと、が必要であるとされています。また、別の条文(48条)に(3)出所明示の要件もあります。

Kinldeのtwitter連係については、上記の(1)と(3)については問題ないと思いますが、(2)がちょっと微妙なところです。つぶやき本体は140字の制限があるので、どうしても文字数的には「本文」<「引用文」となってしまいます。

個人的には、本の内容を丸ごと頭からちょっとずつつぶやいていくような明らかに引用の範囲を超えるケースは論外としても、本文・引用の主従関係についてはある程度柔軟に解釈すべき(「主」より「従」が文字数的に多くても許容すべき)と思っていますが、仮に裁判沙汰になった時にはどうなるかわかりません。

と言いつつ、どっちにしろ、著者がKindle経由で出版することをAmazonと契約する時に、契約条件としてtwitter(facebook)による引用利用について許諾するようになると思います(たぶん)ので、Kindleに関してはあまり気にする必要はないかもしれません。実際、既に日本でもやってる「なか見!検索」については別途権利者に許諾を得ています(私にも出版社経由で許諾の確認が来ました)。

著作権法上の「引用」の範囲はどこまでなのかという問題は、Kindleのように契約で処理できるある程度閉じた世界でよりも、一般的なリツイートやリブログなど契約では処理できない部分で重要な論点になると思われます。これについてはまた別途書きます。

カテゴリー: ガジェット, 著作権 タグ: パーマリンク

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