ニコニコ動画に外国曲の演奏動画がアップ可能になる件

ニワンゴから「ニコニコ動画における海外楽曲の利用許諾についてJASRAC と締結合意へ」というプレスリリース(PDF)が出ました。これが実現すれば、ほとんどの海外楽曲の演奏動画をニコニコ動画(正確にはSMILEVIDEO)に合法的にアップ可能になります。

日本国内で外国曲のカバーをライブハウスで演奏したり、CD化する場合には、外国の著作権者(通常は音楽出版社)や著作権管理団体と交渉する必要はなく、JASRACが包括的に権利処理を代行してくれます(訳詞などを行なう場合は別途出版社との直接契約が必要)。しかし、このような包括的権利処理においては動画と合わせて楽曲を使うという利用形態の権利(通称、シンクロ権)は範囲外でした。つまり、別途海外の権利者と交渉を行なう必要があったわけです(この場合、決まった窓口があるわけではないですし、料金も先方の言い値になってしまうので、ある程度の規模の事業として利用するのでない場合は現実的に外国曲の利用は不可能でした)。ニコニコ動画においても、JASRACやJRCなどの著作権管理団体の契約により、以前から国内曲は合法的に利用可能だったわけですが外国曲のアップは不可でした(静止画に音楽付けたらどうか?画面が真っ黒で音だけ流すのはどうか?とニコニコ動画の中の人に問い合わせたことがありますが、ニコ動が「動画投稿サイト」である以上NGですという回答でした)。

なぜ、動画に音声を付けるという利用形態が外国著作権管理団体との間の包括契約の範囲外になっていたかと言うと、一般に映像作品は巨額の金が動くことが多いのと、楽曲のイメージと映像作品の結びつきが強くなることから、包括的処理にはそぐわず個別の処理を行なうべきであるという考え方が根底にあったと思われます。もちろん、いわゆる映画作品であればこの考え方は今でも当てはまりますが、ニコニコ動画の「演奏してみた」動画には当てはまるとは言えません。シンクロ権の考えが出来た時には、素人が短めの映像作品をどんどんネットにアップするという利用形態は想定されていなかったのでまあ当然です。

しかし、この話は法律の話ではなく、当事者間の合意の話なので、外国曲の管理団体(正確にはその管理団体に権利を信託している権利者)がOKだと言えば合法です。中の事情はよく知りませんが、交渉していただいたニコニコ動画およびJASRACの中の人には感謝したいと思います。

ところで、外国曲のアップがOKになるとジャズスタンダード曲の演奏のアップも可能になりますので、自分の演奏動画やライブでの動画(演奏者の許諾の元で)をニコ動にばかすかアップしていきたいと思います。一般に、ジャズミュージシャンにとってはなかなか魅力的なプロモーション手段になるのではないでしょうか。追記:書き忘れてましたがバイリンガルボーカロイド「巡音ルカ」さんの出番も増えるかもしれません。

なお、念のため書いておきますと、この契約は著作権に関するものであり、著作隣接権は関係ありませんので、CDの音源をニコニコ動画に合法的にアップすることはまだできません(これは、国内曲でも外国曲でも同じです)。

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