なぜホンダスーパーカブの立体商標登録がニュースになるのか?

ホンダの業務用バイク「スーパーカブ」の形状が立体商標として登録されることが決まったというニュースがありました(参照記事)。

記事には番号が載ってないですが調べると出願番号は2011-010905です。IPDL(特許電子図書館)では拒絶査定不服審判が昨年の5月に請求されているところまでしかわかりませんが、審判の結果、登録査定が出たということなのでしょう(なので登録番号はまだわかりません)。

下図は当該商標の公開公報から引用した写真です(他にも斜めから見た写真もありますが省略)。このように商品の形状そのものを商標登録できたわけです。

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立体物であっても、商品やサービスの出所を示すために商標として使われることはある(典型的には看板として使用されるケース)ので、商標登録の対象になります。有名なものとしては、ケンタッキーフライドチキンのカーネルサンダースや不二家のペコちゃん人形があります。ちなみに、日本の立体商標で一番出願日が早いのはセガのソニックザヘッジホッグです(登録が一番早いのはカーネルサンダースです)。

今回のスーパーカブのケースは商品の形状そのものが立体商標として登録されたケースです。これは、上記の看板的なケースと比較して登録のハードルが高いです、商標権は独占権であって、商品の形状そのものが登録商標になれば競合他社は類似した形状の商品を販売できなくなりますし、10年ごとの更新料さえ払えば永遠に権利を維持できますので、登録のハードルが高いのは当然とも言えます。

実際には「商品又は商品の包装の形状であつて、その商品又は商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標」(4条1項18号)を理由として拒絶されたが、長年にわたり使用された結果識別力を得たと判断される(いわゆるセカンダリーミーニング)の規定(3条2項)によって登録されるケースも多いです。つまり、ほとんどの消費者が「あーこの形はあの商品ね」とわかるくらいでないと登録されません。

結構有名と思われる商品でも商品形状そのままの立体商標としての登録を拒絶されています。たとえば、ひよこ饅頭はいったん登録されましたがその後無効とされ、知財高裁まで行って争われて結局無効維持という結果です。サントリーの角瓶は形状だけでは登録されませんでした(文字入りでは登録されています)。苦労してセカンダリーミーニングを主張した上で登録されたものとしては、ヤクルトの容器、コカコーラのガラスボトル、マグライトなどがあります。

ゆえに、「スーパーカブ」はこの高いハードルを越えて立体商標登録されたということで意義があるということになります。

ところで、今までに登録(あるいは出願)された立体商標を網羅的に調べたいという場合、IPDLでは、立体商標であることをキーにして検索できないので困ります(元データに情報が入ってますので検索できるようにする手間なんてたいしたことないと思うのですが)。

しかし、サーチャーの清水美里さんのブログで知りましたが、インフォソナーという民間の商標調査会社が過去の立体商標を文字が付いているもの/いないもの、登録されたもの/出願だけのもの等々で分類してウェブサイトにリストを掲載してくれています(リアルタイムの検索ではなくPDFのリストです)。このサイト、他にもいろいろな商標登録関係リストがまとまって大変便利です。

このサイトのおかげで冒頭の記事で触れているフェラーリの車の形状の立体商標登録が5103270号であることがわかりました(下図は公報より引用)。なお、他の記事でスーパーカブの件が「乗り物としては初めて」と書いてあるものがありますが正確ではないことになります。

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これは599でしょうか?数あるモデルの中でなぜこれだけ立体商標登録しているのかわかりませんが、パクリ車やレプリカ車を出されるリスクがあったのかもしれません。

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