先日の記事で「スウェーデンの音楽産業は最大の外貨収入源である」というお話しを紹介しました。では、「スウェーデンの国内産業に占める音楽産業」ではなく「世界の音楽産業に占めるスウェーデン」という視点で見てみるとどうでしょうか。スウェーデンは米国、英国に次ぎ、世界第3位の音楽輸出国であるそうです(ソース(英国The Independence紙の記事))。これは何となくうなずけますが、スウェーデンの人口が1000万人弱、そして、その音楽産業がほとんど集中していると言われるストックホルムの人口が100万人弱であることを考えるとなかなかすごいことです。コンテンツ立国を目指すわが国としては参考にすべき点が多いと思われます。
なぜ、スウェーデンの音楽産業にこれほどの競争力があるかですが、スウェーデン政府による公式サイトの記事では以下が理由ではないかと推定しています。
1.公立の音楽学校による幼少期からの教育
2.先進的トレンドを好む国民性
3.全国民が英語に堪能
4.MySpaceなどのインターネットチャネルの積極的活用
日本の場合だと、世界的音楽市場で勝負しようと思うとやはり上記の3.が苦しいところでしょう。
さて、次にスウェーデンのP2P事情についてみてみましょう。「P2Pとかその辺のお話し」で紹介されているデータではThe Pirate Bayへのコネクション数の国別の内訳では中国33%、米国8%、スウェーデン1%となっています。しかし、前述のとおりスウェーデンの人口は1000万人弱なので、それを考えると人口当たりの利用率は米国をはるかに超えることになります。中国は別格としても世界でP2Pが最も普及している国のひとつと言えるのではないでしょうか。また、P2Pへの規制に対して国民の反発が強いということは海賊党の議席獲得についての先日の記事でも触れたとおりです。
以上をまとめると次のようになるでしょう。
事実1: スウェーデンの音楽産業には国際競争力がある
事実2: スウェーデンではP2Pによるファイル交換が広く普及している
もちろん、これだけで両者の間に因果関係があると結論づけることはできません。P2Pを禁止したらもっと国際競争力が増すかもしれませんし。しかし、音楽に限らずコンテンツ産業における競争力は国民が芸術分野に幼少期からどれほど親しんでいるか勝負だと思います。事後的に箱モノを作ればコンテンツ産業が発達するというようなものではないでしょう。日本もスウェーデンのようになりたい(実際、日本政府はそうなりたいと言っているわけですが)のであれば、若者たちが良質のコンテンツに触れる機会をできるだけ増やすことにフォーカスすることが不可欠だと思います。
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