TV東京のWBS(ワールドビジネスサテライト)の「日本知財戦略 巻き返しは…」という特集のアーカイブが公式サイト上で見られるようになっています(期限付きかもしれません)。
内容は、主に、プログラムの画面デザインの意匠登録を可能にする法改正案の話です。
画面デザインの保護に関する入門的話はこのブログの過去記事「MAKERムーブメントが知財に与える影響:意匠権と実用新案権」と、EnterpriseZineに連載中の知財入門記事で書いてます。
ポイントは日本の現行制度ではソフトウェアの画面デザインは意匠権で保護されない(意匠権は物品に結びついた権利であるが、ソフトウェアは法律上は物品ではないから)という点が、諸外国との整合性を欠き、問題になっているため、法改正をしてソフトウェアの画面デザインも意匠権の対象にすべきという話です。
特に一般消費者向けの製品等ではプログラムの画面デザインは各メーカーが力を入れるところですが、それが簡単に真似されてしまってはたまらないですね。
こういう話をすると「誰でも思いつく当たり前の画面デザインが保護されることになって問題だ」と言う人がでてきそうですが、それは当たり前の画面デザインに意匠権を与えないようなしっかりとした審査を行ないましょうという話であって、画面デザインを保護すべきでない理由としては失当だと思います。
加えて、現在の日本の制度だと、たとえば、このブログでも書いたように、iPhoneのスライド起動画面は意匠登録され得る(携帯電話という物品に結びついているため)が、iPhoneのアプリ画面は意匠登録の対象外となっており、ちょっと一貫性を欠く印象があるため、やはり是正が必要だと思います。
番組では、もうひとつハーグ協定(ヘーグ協定という人もいますが、今は「ハーグ」が正式らしいです(現地読み重視))についても触れられていました。これは国際的に意匠登録の制度をできるだけ一元化する協定で、日本はまだ参加していません(米国も中国もまだ参加予定の段階)。日本がこの協定に参加すると国際的な意匠登録の敷居もかなり低くなることが予測されます(それが弁理士の仕事にどのような影響があるのかはわかりませんが)。
なお、「ハーグ条約」というのも今ちょっと話題になっていますが、これは国際結婚して離婚した夫婦などが国境を越えて子供を連れ帰ること等に関する条約で「ハーグ協定」とは全然関係ない(共通点はオランダのハーグで採択されたということだけ)なので言い間違えないように気をつけましょう。
番組で事例として紹介されていた企業はソニーとかOBCとかの大企業でしたが、この意匠法改正案はスマフォやガジェット向けのアプリを開発する個人デベロッパーやスタートアップ企業にも大いに関係してくると思います。
このようなブログを書いていただきありがとうございます。
大変勉強になります。
実際に意匠権が改正されると、日本の企業にはどのような影響があるのでしょうか?
また日本の製造業がもっている古き良き技術が新しいフェーズに進む可能性(グローバル戦略など)もあるでしょうか?