北海道銘菓「白い恋人」の製造元である石屋製菓が「面白い恋人」という商品を製造している吉本興業と販売会社を商標権侵害で訴えた件がちょっと話題になっています(参照記事1(朝日)、参照記事2(日経))。
最初この話を聞いたときは、パロディ商品を訴えるとは、いわゆる「ネタにマジレス」であり、石屋製菓は大人気ないと思ったのですが、どうもメディアの報道から判断する限りちょっと違うのではないかという感じがしてきました。
日経の記事によれば、最初は、石屋製菓側も、吉本関連ショップのみで一時的に販売されるジョーク商品と思って黙認していたが、空港や都内でも売られるようになり、さらには道内での販売も検討と聞き、加えて、一部の客から間違った買ったと苦情が寄せられたケースもあったということで提訴に踏み切ったそうです(警告や和解交渉なしにいきなり提訴するのはちょっと珍しいかもしれません)。
また、参照記事のパッケージ画像を見るとわかりますが「面白い恋人」は名称以外特にひねった部分があるわけでもなく、ジョーク商品やパロディとして成立していないと思います。しかも「白い恋人」と類似しており、これでは単なる偽物です。(たとえば、白い犬がパッケージに描いてあって「尾も白い」とか寒いながらも何らかのギャグが入っているのかと思っていたのですがそうではありませんでした)。
また、吉本側(正確には関連会社の吉本倶楽部)は「面白い恋人」を商標登録出願(2010-66954号)までしています(先願である「白い恋人」を理由に拒絶査定)。これはちょっと洒落の域を越えていると思えるので石屋製菓が怒るのも無理ないと思えます。
なお、商標法だけではなく不正競争防止法に基づく提訴も行なっているようですが、「白い恋人」は商品等表示として周知と思われますので、顧客が混同しているということを立証できれば十分根拠があると思います。
ここから先は法律の話というよりも商売の仁義みたいな話になるのですが、パロディ商品を出そうとするのであれば、
- 元の商品に対するリスペクトがあること(元商品の商売を邪魔していないこと)
- 洒落として成立していること(元商品の製造元も「これには思わず苦笑い」になることが望ましい)
- 元の商品の製造元からクレームが付いたときは直ちに販売をやめること
くらいのルールはあるのではと思います。今回は、特に警告もなくいきなり提訴されたようなので、3.のルールについては適用外になってしまいますが、1.と2.のルールについては守られていないように思えます。
ところで、「色+恋人」というパターンの商標ですが簡単に調べた限り、以下の商標が既に登録されています。まあこれらについてはそもそも登録されている時点で特許庁は「白い恋人」とは非類似と判断されたわけですし、パロディ(というほどでもないですが)としては一応成立しているのかなと思います(黒い恋人の方は同じチョコ菓子ですし北海道みやげでもあるのでちょっと微妙かもしれません)。
赤い恋人(第4777974号)
明太子+こんにゃくのようです
青い恋人(第4903168号等) Googleでは該当商品らしいものは見つからず