先日のエントリーでITベンダー/サービス・プロバイダーのクラウド領域におけるビジネスモデルについて以下の3つを挙げました。
1.クラウド・プロバイダーに対してシステムや運用管理ツールを販売する
2.クラウドを活用するユーザー企業のインテグレーションを支援する
3.自らがクラウド・プロバイダー事業を行なう
よくよく考えてみると、2のバリエーションとして
2′ : 顧客のインターナルクラウドの構築を支援する
というのも考えられます。ここで、「インターナルクラウドって従来のイントラネットの基盤に仮想化テクノロジーを適用するとどこが違うんだ?」という議論はあるかと思いますが。(ちなみに私の答は「同じです」です)
さて、このようにクラウド利用あるいは構築におけるサービスプロバイダーの位置づけについて、
クラウドが普及すればユーザーはクラウド上の既存サービスを自由に組み合わせて使えるようになるので、SIerの仕事はなくなる
という趣旨の主張が聞かれることがあります。以前も書きましたが、これは大いなる勘違いであると思います。そもそも、これと似たような言い回しを以前に聞いたことがないでしょうか?一昔前にERPが流行りだした時に、
ユーザーが全面的にERPを導入し、業務プロセスをパッケージ側に合わせれば、システム・インテグレーションは不要になる
などという主張がされたと記憶しています。「クラウドがあればSIは不要説」はこの主張に類似しています。確かに、ERP(というよりも統合業務パッケージ)はある程度普及しましたが、それによってシステム・インテグレーションの仕事はなくなったでしょうか?そんなことはありません。逆に、業務とのギャップ分析、アドオン開発、既存システムとの統合等々、SIerにとっての市場機会は増加したとも言えるでしょう。
クラウドについても同様のことが当てはまると思います。クラウドというOSの上でSaaSという統合業務パッケージが稼働するとも考られるでしょう。もちろん、SIerに求められるスキルセットが変わることにはなるでしょうが、SIerの仕事そのものがなくなることは考えられません。むしろ、ますます増えていくと考えます。たとえば、Salesforce.com社のパートナー・エコシステムへの力の入れ方を見ただけでもクラウド周りのビジネス機会は十分にあると思われます。
全く同感です。日本の企業は簡単には「自社固有プロセス」を捨てることはできません。この固有プロセスは「人材流動性」が極端に低い日本で特に増えやすくなっています。この固有プロセスがある限り、カスタマイズ、という作業はなくならず、ERPがもっと普及しても、SaaSが普及しても、Sierビジネスは、(形は変えても)なくならないと思います。また、差別化のためのプロセスのシステム化にはカスタマイズもしくは作り込み(手組み)が不可欠です。さらに、SaaSはこれまでシステム化があまり進んでいなかった中小企業をターゲットにしているベンダーが多く、そこにも新しいSIビジネスの機会が生まれるかもしれません(中小もいろんな意味でカスタマイズの意欲は高いです)。