AT&T傘下のAioという会社ががサービスの説明サイトの地図でマゼンダ色を使ったことに対して、T-Mobile米国法人が商標権侵害で訴えたという事件がありました(参照記事(WIRED.JP))。実際、T-Mobileはマゼンタ色を単独ででUSPTOに商標登録しています(固定リンクがあって便利)。
この事件そのものについてはちょっと置いておき、色彩単独から成る商標について書くことにします。
米国の商標制度では、色彩単独、音、さらには香り等が商標として認められています(ただし、香り商標の登録例ははまだないようです)。なお、色彩単独で商標登録するためにはセカンダリーミーニング(使用による識別性)が必要です。すなわち、長期間にわたりその色をビジネスの標識として使っており、消費者が認知していることが必要です。
他の色単独の商標としては宝飾店のティファニーが店舗や商品の箱に使っている空色(いわゆるティファニーブルー)が有名です。さらに他の色単独商標がBusiness Insiderの記事”10 Colors That Might Get You Sued”(あなたを訴訟に巻き込むかもしれない10色)でまとまってます。なお、この見出しは釣りで書いてるのだと思いますが、これらの商標権者の競合他社が似たような色を使って商売をするのでない限り訴訟沙汰になることはありません。商標権は商標を商売の標識として使うことを独占できる権利であって、その商標(この場合は色そのもの)のあらゆる使用を独占できる権利ではありません。
さて、言うまでもなく、日本の現在の商標制度では色単独では商標登録することはできません。商標法では、商標を「文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合(以下「標章」という。)であつて(以下略)」と定義しており、文字や図形等の組み合わせではない色彩単独という商標は観念されていないからです。
しかし、日本でも現在定義されている伝統的商標以外にも、音(特にサウンドロゴ)や色を商標登録の対象にしようという動きがあります。この話は何年も前から浮かんでは消えた話(サウンドロゴに関して大昔に書いたブログ記事)なのですが、今回ばかりは少なくとも音については来年に商標の対象になる方向が固まったと言われています(参照記事)(そうなると特許事務所も簡単なDAW環境くらい用意しておかなければいけなくなるかもしれません(弊所では既にあります))。
色彩単独商標が日本でどうなるのかはまだわかりませんが、ただ、日本の場合はこの色ならこの会社(あるいは商品)というほど、色が識別性を発揮しているケースはあまり思いつきません。会社じゃなくて個人であれば、緑と言えばあの会社の社長さんというのはすぐ思いつくんですが(やや内輪ネタですみません)。