やや旬を過ぎた感もありますが、土屋アンナの舞台中止問題において、原作本の著者が舞台制作の許諾をしていないということでもめている件の著作権法的考察です。
一般に、作家と出版社が出版契約を結ぶ時には、出版権の設定に加えて映画化等の二次的利用に関する処理の管理を出版社側に任せる(翻案権の譲渡ではありません)ことが多いです。書協(日本書籍出版協会)の契約書ひな形もそうなっています。
第3条(二次的利用)
本契約の有効期間中に、本著作物が翻訳・ダイジェスト等、演劇・映画・放送・録音・録画等、その他二次的に利用される場合、甲はその利用に関する処理を乙に委任し、乙は具体的条件について甲と協議のうえ決定する。
ということで、著者のあずかり知らないところで出版社が勝手に二次利用の話を進めてしまったというよくある話だろうということで、twitterでもその仮定に基づいた議論が行なわれていました(たとえば、このtogetter)。
しかし、J-CASTの記事によると、
なお、濱田さんの原作「日本一ヘタな歌手」を出した出版社の光文社では、「今般の舞台化につきましては関与しておりませんので、コメントは差し控えさせていただきます」(広報室)と取材に答えている。
ということなので、今回はそういう話ではなかったようです。と言いつつ、この舞台の制作発表の会場は光文社だったので「舞台化について関与していない」という主張には疑義が残ります。
また、出版契約によって、二次的利用の管理が出版社に委任されているとするならば、舞台制作側は著者と交渉するより先に出版社と交渉するのが通常であり、出版社が舞台化に関与していないこと自体がおかしいとも言えます。
この辺の事実関係ははっきりしません。
他にもいろいろ調べてみると、
土屋アンナさん降板の舞台、初日まで1週間あって、この舞台に熱い想い入れがあって、なおかつ損害がそんなにかかるなら、代役たててやればいいのに。高橋茂氏(別名・甲斐智陽)は「舞台を何十年やってて初めて。」ってゆってるけど、姐さん33年舞台やってて、この方の名前はじめて聞いた。
? 毬谷友子 (@mariyatomoko) July 31, 2013
というツイートや、「100枚チケット売れ 出演者にノルマも」なんて報道もあったりで、あまり著作権うんぬんを考察するような案件ではない気がしてきました。
とは言え、出版やその他の契約における翻案権の扱いは重要トピックだと思いますので、もっとふさわしい事例を使って後日改めて考察してみようと思います。