違法着うた配信サイト「第(3)世界」(3は丸数字)の民事(損害賠償請求)の判決があり、東京地裁はサイト管理人に対して損害賠償金1億7千万円を原告JASRACへ支払うことを命じました(参照記事)。これは日本の著作権侵害訴訟として個人に命じられた損害賠償額としては結構大きいのではと思います。(これは刑事罰の罰金ではなく、民事の損害賠償であることに注意。刑事の方は既に執行猶予付有罪判決が出ています。)
そもそも、日本の法律では米国のような懲罰的賠償制度というものはなく、損害賠償額は実際の被害額以下になります。たとえば、過失や故意によって時価100万円の車を壊して使えなくしたのであれば、最大でも100万円を賠償すればよいことになります(状況によっては、これに加えて逸失利益だとか精神的苦痛に相当する金額を支払わなければならないこともあるでしょう)。
ところが、著作権のような無体財産権の場合は具体的な損害額の算定が困難です。ということで、著作権法には損害額の推定に関する規定(著作権法114条)が定められています((これは特許権等でも同様)。簡単にまとめると以下のようになります。
- 海賊版の販売(ダウンロード)数に正規版販売の1件ごとの利益をかけた額
- 海賊版の販売(ダウンロード)数に正規版のライセンス料金の1件ごとの利益をかけた額
- 海賊版業者の不当利益額
これはあくまでも推定規定なので被告側は反証することができますし、原告側もこれ以上の額を請求することが可能です。今回は被告側は争っていないようなので原告(JASRAC)側の請求額がそのまま損害額として認定されました。
この裁判で、どういう根拠により1億7000万円という賠償金が算定されたかはわかりません(ちゃんと調べればわかるかも)が、一般的な例で考えると、たとえば、1000曲を違法に公開していて、それぞれ1000回ダウンロードされ、正規ダウンロードの利益が1回ごとに100円だとすると1億円になってしまいますので、一般的に違法アップロードを大々的に行なうと損害賠償額が相当の額になることがわかります。
なお、サイト管理人男性はアフィリエイト収入として1億2000万円程度の収入を得ていたようなので(JASRACのプレスリリース参照)、1億7000万円という数字も法外ではないと言えます。不当収益に満たない損害賠償額しか請求できないのであれば、いわば「やり得」状態になってしまいますからね。
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